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インタビュー

若林美智子

胡弓でアジア的な流れを
感じてもらえたらいいですね


三日三晩踊り明かす《風の盆》でおなじみの富山県八尾(やつお)町在住の胡弓奏者・若林美智子が3年ぶりにセカンド・アルバム『風の盆恋歌』を発表する。十八番とも言える「越中おわら節」はもちろん、石川さゆりのヒット曲で有名なタイトル曲から、胡弓が日本に伝わったルートとされているシルクロードをイメージした「シルクロードのテーマ」、自身の麗しき歌声が映えるオリジナル曲「花響(はなゆら)」まで、しばしば《哀調》と形容される胡弓らしいメロディだけでなく、ラバーブ、ウードなどの民族楽器も取り入れるなど、汎アジア的な色彩も随所に感じられる意欲作になっている。そんな胡弓の新たな可能性を追求し続ける彼女に本作のことを中心に聞いてみた。



●つい最近まで胡弓と二胡とは擦弦楽器(さつげんがっき)として同じものだと思っていたんですが、まったく違うものだったんですね。

「胡弓は日本の楽器なので、本来は二胡より知られているべきなんですが…(笑)。中国の二胡がものすごい勢いで入ってきたので、胡弓と言うと二胡を思い浮かべる方が多いようです。実際に胡弓音楽は、民謡ですと《おわら》だけですし、その他も地唄(三味線音楽のひとつ)ぐらいにしか使われていないので、本当に知る人ぞ知るという感じの楽器だったんです」

●形としては三味線に似ていますね。

「そうですね。元々は三味線が先で、それを弓で弾く楽器として作られたもので、弦も同じ絹糸を使っています。弓は馬の尻尾で、ヴァイオリンなどの擦弦楽器と同じですが、張り方が緩いので、そのテンションを調節しながら音のニュアンスを変えていくんです。本体を180度近く回しながら演奏する奏法も難しいと思います」

●起源は中央アジアとのことですが…。

「ウズベキスタン周辺で誕生して、そこからシルクロード経由で中国に入ったようです。いつ日本にやって来たのかはハッキリしていなくて、室町後期とも江戸初期とも言われています。ただ、二胡は京劇などの速いパッセージを弾くために改良されたものらしく、胡弓の方がオリジナルに近いと考えられています」

●胡弓の魅力は、悲しげでむせび泣くような響きでありながらも、大陸的な雄大さも感じさせる音色にあると思うんですが、若林さんにとって胡弓の魅力は?

「胡弓と出会ったのは《おわら》を弾く祖父の影響で、そこが出発点なんですが、私自身の活動については、もう少し広い視野に立って、どんな曲を胡弓で弾いてもアジア的な音に聴こえるように意識しています。ですからグループ名も「亜人亜(ありあ)=アジアの人々」と名づけているんですよ。アジア一帯って人種もそうですが、楽器も混ざり合っている気がするんですよ。胡弓はそういうアジア的なものを充分に表現できる楽器だと思っています」

●胡弓音楽には欠かせない「越中おわら節」演奏される《風の盆》とはどのようなお祭りなのですか?

「毎年9月1日から3日間、「越中おわら節」だけを演奏しながら町中を練り歩くものです。長年、町の行事として受け継がれてきたものだったんですが、90年代頃から口コミで広がって、今では大きなイベントとして定着しています」

●今回のアルバム・タイトルにもなっている石川さゆりさんの大ヒット曲「風の盆恋歌」は、その《風の盆》をイメージされて作られたようですが…。

「でも、八尾の《風の盆》をイメージしたにも関わらず、間奏で使われている楽器は二胡なんです(笑)。ですから今回の「風の盆恋歌」は、絶対に八尾の胡弓で表現しようと思っていました」

●全体的にはどのような作品にしようと思っていましたか?

「基本的には前作と同じですが、胡弓を使って、アジアの流れや原曲とは違うニュアンスを感じてもらいたいと思って作りました。「風の盆恋歌」を地唄風のアレンジで弾いてみたり、琴のイメージがあった「花響(はなゆら)」では、箏曲風のアレンジにしてみたりとか。ミュージシャンは亜人亜の3人以外にも加わっていただきました」

●若林さんの音楽の特徴は、《おわら》に軸足を置きつつも、様々なジャンルの曲に挑戦するところだと思います。ファースト・アルバムではアイルランド民謡「ダニーボーイ」や、黒人霊歌「アメイジング・グレイス」などが収められていましたが、今回もフォルクローレの名曲「コンドルは飛んでいく」、ボサノバの名曲「黒いオルフェのテーマ」、そして喜多郎さんの「シルクロードのテーマ」など、まさに胡弓で世界を旅しているような内容になっていますね。

「胡弓ならではの音やアレンジで表現することは意識しています。もっと突き詰めていくと地球、そして宇宙全体の中の一つの音ということで、自分のテーマとしては《素宇流(ソウル)=素直に宇宙に流れる》という、自然な音色を表現していきたいと思っています」

●「シルクロードのテーマ」は、ラバーブ(アフガニスタンの三味線みたいな楽器)をはじめ、笙や琴も入っていますね。

「シルクロードっぽい楽器を使えたのは面白かったですね。あの絡みはかなり良い感じに仕上がったと思います」

●先ほどもおっしゃっていた「花響」は、若林さんのオリジナル曲で素敵な歌声も披露されていますが。

「精力的という訳ではないんですが、オリジナルは何曲かあります。よく《降ってきた》と表現しているんですが、詞が降ってくると曲を付けていただくという感じです。この曲はライブのときに演奏すると、みなさんに好評だったので収録してみようと思ったんです。まあ、本職は歌手ではないので、特別上手いという訳ではないですが(笑)。ただ、私は書もやりますし、絵を描くのも好きなので、歌うのはそういった自己表現の一つと言うか、総合アート的な感覚で捉えています」

●これから共演してみたいアーティストはいますか?

「日本の楽器ももちろんそうですが、アジアの流れを感じられる楽器を使っている方ともっとご一緒してみたいです。あとジェイク・シマブクロさんは個人的なファンです(笑)」

●アルバム発表後のコンサートツアーは予定されているのですか?

「現在、企画調整中です。全国どこでもお伺いしますので、ぜひ呼んでいただきたいと思っています」




風の盆恋歌

8.23 ON SALE

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① 風の盆恋歌
② 越中おわら節
③ 越中おわら節(胡弓独奏)
④ 間奏Ⅰ〜花嫁人形
⑤ シルクロードのテーマ
⑥ 花響
⑦ 童神
⑧ 間奏Ⅱ〜朧月夜
⑨ コンドルは飛んでいく
⑩ 黒いオルフェのテーマ
⑪ ゆりかごの歌〜間奏Ⅲ
⑫ 峠の我が家
⑬ アヴェ・マリア

CD:VICC-60533 ¥3,000
ビクターエンタテインメント

 

 

発売中 

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哀の調べ〜風の盆の里より

胡弓が欠かせない富山民謡「越中おわら節」をはじめ、日本の子守唄や童謡から、「アメイジング・グレイス」などの海外の民謡まで、幅広い楽曲を収録した1stアルバム。哀切をともなった独特のむせび泣くような響きをぜひ聴いてほしい。

CD:VICC-60345 \3,045/CT:VITC-60001
¥3,000
ビクターエンタテインメント

 

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哀の調べ〜風の盆の里よりライヴ

2003年11月に大阪・いずみホールで行われた1stアルバム発売記念コンサートの模様を収録。「越中おわら節」では地元富山から踊り手も参加。本格的なパフォーマンスを堪能できる。オリジナル曲「満月の二日前〜かささぎの橋」と、今回のアルバムに収められた「花響(はなゆら)」も収録。

DVD:VIBC-14 \5,000/VHS:VIVC-39 \5,000 ビクターエンタテインメント



 

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